僕はアトリエを半ダースのひまわりの絵で飾ろうと考えている
SOMPO美術館にて開催されたゴッホの作品、それも静物画に注目した企画展に行ってきた。ちなみに以上の写真は《ひまわり》のある展示室に向かう廊下の壁に書かれたものであり、これから《ひまわり》に直面する入場者の期待と興奮を高めてくれている。
扉のすぐそばにフォトスポット。
開館の5分前に到着したが既に来館者の列ができていたのと、入場前に手荷物検査を実施していたのに驚いた。確かに近頃は展示室で物騒なことをする人もいる。ゴッホの作品も過去に攻撃された。
一部の作品の写真撮影とその私的使用が許可されたので、写真とともに感想などを。
フィンセント・ファン・ゴッホ《カーネーションをいけた花瓶》
キャプションによればゴッホが花の静物画を集中的に描いたのはパリに来てからのことだそう。他にも数点あったが、この一枚は透明のカバーがかけられていなかった。つまり、ゴッホの特徴である厚塗りの筆跡を最大限堪能できるということだ。
液晶画面では分からない表面の凹凸を確認できるから、(わざわざ)お金を払って実物を見に行く。異なる角度から作品を見て、細かい光の反射や陰りを楽しむのは行った人だけが享受できる醍醐味だ。
フィンセント・ファン・ゴッホ《アイリス》
さすがに透明のカバーがかけられていた。背景を黄色にしているからかえってアイリスの青ないし紫が際立つ。ゴッホが花の静物画を描いたのは色彩の研究の側面があったと推測される。
これは後述する《ひまわり》のまさに隣に展示されていて、2枚を同時に拝見できるのは結構凄いことなのではないかとも思うのだが、ありがたいのは展示室に長椅子が置いてあったことだ。柔らかい座面に腰掛けて、一時間でも二時間でも《アイリス》と《ひまわり》を堪能できるようになっている。本物の植物よりも描かれた植物の方が、かえって長いこと眺めていられる気がする。
欠かすことなく斜め横からも拝もう。
《フィンセント・ファン・ゴッホ》ひまわり
《アイリス》同様カバーがかけられていたが、立体感は十分に伝わる。花弁が《アイリス》よりも立体的に強調されているように見えた。
この通り。しかしこれはあくまで写真。繰り返し強調するが、異なる角度から作品を見て、細かい光の反射や陰りを楽しむのが足を運ぶ醍醐味の一つ。
この展示室には他の画家のヒマワリの絵もあった。本作を背景に据えて別のモチーフを描いたもの、要は画中画として《ひまわり》が描かれたものもあった。太陽の花としてヒマワリを芸術と結びつける認識が本作以後、ゴッホ以外の画家にも浸透したのだろう。あるいは本作を死後再評価する動きがまさにそこにあったのだろう。そういうゴッホの影響力を感じる展示だった。普通に一枚展示しただけでは気づけない点だ。
良い体験をした。生きているうちにファン・ゴッホ美術館にも行きたい。静物画にとどまらず彼の色鮮やかな筆跡は今でも人の心を動かす。